ちまたでは「美容院」と「美容室」というよく似た名称が使われているのを目にします。
このふたつには何か違いがあるのでしょうか?
美容院と美容室の違いってあるようでない? その微妙な違いとは?
美容院と美容室の違いは何か?
その答えは、
「名称(言い方)が違う」
ただそれだけです。
美容院も美容室も、まったく同じものを指している言葉です。
それじゃ、美容院と美容室、どっちが正式な名称なのでしょう?
辞書を引くと「美容院」は記載されていますが、「美容室」という言葉は載っていません。
それを根拠に「美容院」のほうが正式だと言う人もいますが、その解釈は正しくありません。
日本語や国語に詳しい人ならご存じかと思いますが、辞書に載っている言葉が正しい日本語というわけではなく、また、辞書に載っていない言葉が間違った日本語というわけでもありません。
ですので「美容院」と「美容室」という言葉はまったくの同等――どちらも正しい名称なのです。
あえて公式な名称を挙げるとすれば、それは「美容所」です。
日本の法律(美容師法)で「美容所」という名称が使われているからです。
美容院と美容室はまったく同じ意味ですので、
「店のオーナーがどちらの名称を選んだか」
それによって違いが生じています。
理容院、理髪店、床屋、ヘアーサロンの違い
ほかにも似たような言葉がいくつかあるので、それらの違いについてご説明いたします。
理容院、理容室、理髪店、床屋なのですが……
ぜんぶ一緒です。これらはすべて同じ意味の言葉です。
あえて公式な名称を挙げるとすれば、法律(理容師法)で使われている「理容所」がそれに当たります。
「それじゃ、美容院と理容院も、名称が違うだけで同じ意味なのか?」
そう思った人もいるかもしれませんが、この両者は違うものです。
○美容所、美容院、美容室
○理容所、理容院、理容室、理髪店、床屋
このように区分されます。
これは、美容師法と理容師法によって業務範囲が分けられており、日本では「美容」と「理容」の違いが法律によって定められているからです。
美容は、パーマ、結髪、化粧など、より容姿を美しくすること。
理容は、散髪、刈込、顔剃りなど、容姿を整えること。
つまり、
「美容院や美容室は、容姿をより美しくする場所」
「理容院や理髪店は、髪を切ったり顔剃りをする場所」
ということになります。
ですが、実際に美容室ではカットをしてくれますし、理容室でもパーマをかけてくれたりします。
これは、法律の規制が緩和したことによって業務範囲が拡大したことや、美容師と理容師の両方の資格を持っている人が増えたことによるものです。
もうひとつ、「ヘアーサロン」という言葉がありますが、これは美容院や理容院の区別なく、すべてに使える名称です。
海外では「美容」と「理容」の区別を明確にしていないからです。
なぜ美容院は月曜日や火曜日の休みが多いのか? 美容院の組合とはどういうところなのか?
美容院や美容室は、月曜日や火曜日が定休日のところが多いです。
これは、電気の供給が未発達だった頃の名残だと言われています。
第二次世界大戦前後の日本は、まだ電気の供給が安定していませんでした。
そのため「休電日」を設けており、電力の供給がストップする日がありました。
それが、月曜もしくは火曜だったのです。
当時のパーマは電気を大量に使用する方法が主流だったこともあり、美容院や美容室は電気を多く使う場所でした。
しかし、電気を止められてしまっては営業ができません。
美容院は、休電日に合わせて店を休むようになります。
それが、月曜日や火曜日が定休日になった始まりだと言われています。
関西では月曜が、関東では火曜日が定休日になっている理由
関西では月曜が定休日のところが多いのに、関東だと火曜が定休日のところが多いのには、何か理由があるのでしょうか?
これは、簡単に言ってしまうと、
「所属している組合が違うから」
ということになります。
全日本美容業生活衛生同業組合連合会(美容連合会)は、昭和33年3月25日に厚生大臣(現・厚生労働大臣)に認可されて設立した公的な全国団体です。
各都道府県の会員数の総計は8万軒を超えており、美容業界最大の団体です。
組合は、全国47都道府県ごとにあります。
そして組合の方針に従い、関西の組合に属している店は月曜日を、関東の組合に属している店は火曜日を定休日に定めています。
では、どうして関西の組合は月曜日を、関東の組合は火曜日を定休日にしているのでしょう?
それはやっぱり、休電日の名残りだったりします。
関西では月曜日が、関東では火曜日が休電日だったからです。
といっても、すべての店舗が組合に属しているわけではなく、また法律で定休日が決められているわけでもないので、ほかの曜日を定休日にしているところや、年中無休で営業しているところもあります。
「美容室に行こうと思ったら今日は月曜日(火曜日)だった……」という場合でも、あきらめる必要はありません。
探せばきっと、営業している店は見つかりますよ。
「院」と「室」で雰囲気が変わる?
名称の違いというのは気になりだしたらけっこうモヤモヤしますが、美容院と美容室の場合は、ただ単に言い方が違うだけだったりします。
わかってしまえば「なんだ、そんなことか」という感じではありますが、でもこういうのって、やっぱりわかるとスッキリしますよね。
ちなみに、「院」という単語を辞書などで調べると
貴人の邸宅や別荘(大辞泉)
寺・学校・官庁などの施設・組織(明鏡国語辞典)
と記されています。
もとの意味は「垣にかこまれた大きな建物」のことです。
高貴な人が住む屋敷や、宗教や公的な施設に対して多く使われる言葉ですので、「院」を使うと格式高いイメージになります。
いっぽう、「室」という単語は知ってのとおり、
部屋(明鏡国語辞典)
という意味です。
ですので、「室」を使うと親しみやすさを感じさせる名称になります。
そんな違いを頭に入れながら、お店の雰囲気を楽しんでみるのもいいかもしれませんね。
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