ひどく緊張しやすくて、本番で実力を発揮できない――
そのような人のために、緊張を克服して本番で能力を発揮する方法をまとめました。
プロ格闘家から学ぶ本番前のリラックス法
1970年代に活躍したマーシャルアーツ(アメリカンキックボクシング)のスーパースター、ベニー・ユキーデ氏は、試合前になると、控え室のベンチで仰向けになり、胸に聖書を抱いて心身をリラックスさせていました。
元K-1ファイターであり、総合格闘技で活躍しているミルコ・クロコップ氏は、試合前、控え室でチームの仲間と「ベラ」というカードゲームに興じていました。
格闘技の試合というもっとも緊張する状況で、彼らはどうして本番前にリラックスすることができたのでしょうか?
それは、本番前(試合前)にはいつも同じことをすることにより、モードが切り替わるからです。
「本番前にいつも同じことをする……要するに験(げん)をかついでいるのか?」
そう思った人もいるかもしれませんが、験をかつぐのとはちょっと違います。
ルーティーンがリラックスを生む理由
彼らがやっているのは、アンカリング(条件付け)を応用した心理テクニックです。
試合前になると毎回同じルーティーン(ルーチン)をおこなうことで、スイッチがはいります。
つまり、潜在意識が「本番モード」になるのです。
いつもと同じルーティーンにはいったことで、潜在意識は「これから本番だ」と気づき、動揺を鎮め、集中力を高めて準備を整えます。
深層レベルで「心の準備」が整っていくため、緊張が緩和します。
アンカリングを使ったセルフコントロール術です。
ルーティーンの作り方
このやり方を応用するには、本番前に自分のルーティーンをつくっておくことが大前提です。
試験のためのアンカリングをつくる場合は、家や塾などで勉強をはじめる前に、自分だけの何かをおこなうようにしましょう。
拳をつくって「やるぞ」とつぶやくのもいいですし、胸に手を当てるのもいいでしょう。
そうやって「頭脳モード」にはいるときのルーチンをつくりあげます。
そして、本番(試験)の前にもそれをやるようにします。
集中力を高めながら、緊張をほぐすことができるようになります。
試合前や試験前の短時間でできる、少しでも緊張しない方法とは?
日数をかけてアンカリングをつくらなければならない方法ではなく、もっとすぐにできる緊張緩和法はないのでしょうか?
以下の方法を、ぜひ試してみてください。
深呼吸する
広く知れ渡っている方法ですが、効果はあります。
深呼吸をすると自律神経が刺激を受け、副交感神経が優位の状態になり、心身が落ち着きます。
緊張を緩和させるもっとも一般的な方法です。
おもいっきり力をいれる
拳を強く握りしめたり、両腕に力を込めたりして、10秒ぐらいのあいだおもいっきり力をいれます。
その後、ふっと一気に脱力します。
これは「筋弛緩法(きんしかんほう)」を簡略化したものです。
力をめいっぱい入れたあとは、対比の作用によりリラックスへと向かいます。
肉体の緊張が解けたことにより、心の緊張も緩和します。
息をとめて静止する
ネガティブな考えばかりが脳裏をよぎり、不安の泥沼にはまりそうなときは、息をとめて静止します。
動いてはいけません。息をしてもいけません。しばらくのあいだ彫像になったかのように完全に静止します。
ちょっと苦しくなってきたな、と感じたら呼吸を再開し、もとに戻ります。
思考がだいぶ落ち着いたはずです。
これは、ヨガなどに伝わるいにしえの瞑想技法を応用したものです。
肉体と呼吸を完全に静止すると、束の間、無心(無思考)の状態になります。
動揺していた心がリセットされるため、心が落ち着きを取り戻します。
うまくいったときのことを考える
うまくいったときのことを考えてみましょう。
意識の焦点が「失敗」から「成功」に切り替わると、失敗に対する恐怖が払拭されて、緊張が解けます。
ときにはワクワクしてくることさえあります。
緊張するのは当然のこと!? その原因を知り緊張と付き合うコツを身につける
心の専門家のあいだでは「緊張は悪いものではない」という意見のほうが多いです。
本番の前に不安になるのは当たり前のことです。誰もが本番前には緊張します。
本番の前に緊張した状態になるのは、失敗したときのことを考えて恐怖を感じているからです。
この状態になると、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌されて交感神経が優位になり、血圧上昇・震え・動悸などの症状がでることもあります。
この状態のときは誰もが不快感を覚えるため、なんとかして緊張を取り除こうとします。
ですが、この状態は「恐怖の対象に打ち勝つために心身が戦闘モードにはいっている」という状態です。
それが緊張です。
言うなれば、「心が成功するための準備をしている」ということです。
緊張することによって集中力が高まり、本番に挑む覚悟が固められていきます。
緊張が悪いのではありません。
緊張は、本番前の準備です。
問題なのは、「緊張した状態を本番に持ち込んでしまうこと」です。
本番に強い人というのは、緊張と向き合い、緊張を受け入れ、本番がはじまったら集中して能力を存分に発揮できる人のことです。
本番前はおもいっきり緊張する
プロボクサーは、試合前の控え室ではひどく緊張しています。
カメラやアナウンサーがはいってくるとシャドーボクシングやミット打ちをはじめますが、カメラが去ると、椅子に座ってじっとうなだれたり、落ち着かない様子で部屋の中をうろうろ歩き回ったりします。
ボクサーの多くは、試合前にはあえて緊張します。
本番の前にめいっぱい緊張しておくと、試合がはじまったら心身が落ち着くことを知っているからです。
不安を紙に書く
本番前に不安を紙に書き出すことにより、本番では集中して能力を発揮できるようになります。
これは心理学的な実験で証明されている方法です。
紙に書き出すのは、頭の中で考えたり、口に出して言うよりも、「書く」という行為のほうがネガティブな感情を解消できるからです。このことはカリフォルニア大学のソーニャ・リュボマースキー博士の心理実験によって確認されています。
試験などの本番前には、「怖い」、「不安だ」、「失敗したらどうしよう」と、いつわることなく自分の気持ちを書き出しましょう。
本番では落ち着いた状態になり、能力を存分に発揮できるようになります。
まとめ:あなたに最適な対処法を
人の心は一人ひとり異なっているため、すべての人に通用する緊張の対処法はありません。
ここで述べた方法を参考に、あなたに最適な対処法を見つけ出してください。
秘訣は、緊張と闘うのではなく、緊張を受け入れて味方につけることです。
緊張は、本番に挑むための心の準備なのですから。
コメント