ボクシング

ボディブローはなぜ効果あるのか?筋肉で鍛えてもダメージになる理由とは?

ボクシング

格闘技以外の場面でも「ボディブローのようにじわじわ効いてくる」という言い回しがよく使われています。
いったいボディブローとはどのようなパンチなのでしょうか。

ボディの急所は?

ボクシングでは、打撃できる場所は腰(トランクスのベルトライン)から上であり、狙う場所は「顔面」と「胸・腹部」になります。
このうち胸・腹部のほうを狙ったパンチがボディブローになります。

胸・腹部における有効な急所は、以下になります。

・心臓
・みぞおち
・胃
・肝臓

もっとも効果のある急所は、「みぞおち」と「肝臓」です。

みぞおちの位置は、腹部の上方中央のくぼんでいるところを指します。
腹筋が6つに割れているお腹で言うと、「上中下3段になっているいちばん上の段」のところです。

ボディブローの原理とダメージの感覚とは? 吐くって本当?

ボディーブローの原理

「ボディブローはじわじわ効いてくる」という原理は、意外とシンプルです。
腹部に強いパンチを受けると、内臓に衝撃がきます。
その結果、体の機能――特に呼吸器系の機能が低下し、スタミナが奪われていきます。
つまり、ボディブローをたくさん打つと、相手を疲れさせることができるのです。

ボディーブローのダメージ

とはいえ、実際のボクシングにおいてボディブローでダメージを与えるときというのは、一発のクリーンヒットがほとんどです。

特に、みぞおちや、右脇腹(肝臓)にボディブローがクリーンヒットすると、一発で効きます。

みぞおち

みぞおちがダメージを受けると横隔膜の動きが止まり、呼吸困難におちいります。
息を吸ったまま吐けない、息を吐いたまま吸えない、完全に呼吸できない――そのような状態になります。
しかも、みぞおちには神経叢(神経の束)があるため痛みを感じやすく、激痛に見舞われます。
苦しいです。地獄です。言葉では言い表せないような苦しみです。

右わき腹(肝臓)

もうひとつの急所は右わき腹(肝臓)です。
左ボディアッパーなどでここを打つパンチを「レバーブロー」と言います。
体の正面は腹直筋が鎧の役目を果たしていますが、脇腹にはほとんど筋肉がなく、皮膚のすぐ下が肝臓です。
そのため、レバーブローがクリーンヒットすると、肝臓がモロにダメージを受けます。
内臓が直接的なダメージを受けると、体の奥から鈍痛がし、身体の機能が一気に低下します。
苦しいです。地獄の苦しみです。悶絶します。

ボディーブローで吐くことはあるのか?

お腹を強く殴られると、気持ち悪くなって嘔吐してしまう――
そういうイメージをいだいている人も少なくないと思いますが、実際のボクシングの試合で嘔吐した選手は見当たりません。

あえて言えば、2016年12月31日の井岡一翔VSスタンプ・キャットニワットの世界フライ級王座統一戦で、7ラウンド、井岡選手のボディブローでノックアウトされたスタンプ選手が、立ち上がったときに口から少し水を吐いていました。
それ以外には、嘔吐したというケースを知りません。

ボクサーが強いボディブローを受けても吐かない理由は、試合の数時間前から何も食べておらず、胃の中に食べ物が残っていないからです。
試合直前に食べる、という非常識なボクサーが現れないかぎり、今後もボディブローで嘔吐するボクサーはでてこないと思います。

嘔吐はしませんが、胃に強いボディブローを受けると吐き気をもよおすことはあります。

 

効果的なパンチのコツとは?

みぞおちや右脇腹を打てば、かならず効かせられるわけではありません。
ボクサーはみな、急所への打撃にも耐えられるように鍛えています。

鍛えられたボクサーの腹を効かせるには、次のような工夫をしなければなりません。

相手の意識をボディからそらす

上(顔面)にパンチを集めると、相手はボディに意識が向かなくなります。
その瞬間にボディブローを決めると不意打ちのようなかたちになり、鍛えられたボディでも一発で効かせることができます。

相手が息を吐ききった瞬間に当てる

もしくは、相手が息を吐ききった瞬間を狙います。
筋肉は、息を吐いているときは緊張して硬くなり、息を吸うときには弛緩してやわらかくなります。
息を吸うタイミングにボディブローを決めると、腹部の筋肉がゆるんでいるため、一発で効かせることができます。

吐ききった瞬間に当てるコツ

「息の吐き終わりを狙うなんて、そんなこと本当にできるのか?」
そう思うかもしれませんが、これには方法があります。
相手のパンチが打ち終わる瞬間を狙うのです。
パンチを打つときは息を吐くため、パンチが打ち終わる瞬間は、ちょうど「吐く」から「吸う」の転換のタイミングになるからです。

やり方はこうです。

・相手のパンチを、左側に体を傾けてかわす
・相手のパンチが打ち終わるタイミングに、左ボディアッパーを決める

このテクニックの名手は、辰吉丈一郎さんです。
辰吉さんのボディ攻撃は本当に見事でしたね。

ボディブローに負けない身体の鍛え方であなたも細マッチョボディに

ボディブローに耐えられる体をつくるには、第一に強靱な腹筋が必要です。
腹直筋が「筋肉の鎧」となり、パンチを跳ね返してくれるからです。

腹筋運動+腹をたたく

通常の腹筋運動に加え、腹を叩く練習もおこないます。
ボクサーは、メディシンボールを腹に落としてもらったり、手を後ろに組んだ状態で腹にパンチを打ってもらうなどして、打撃に強い腹筋を鍛えています。

メディシンボールで内臓を鍛える

また、急所にパンチを受けても耐えられるボディにするには、内臓も鍛える必要があります。

ボクサーの場合は、メディシンボールを腹の上で転がすなどして、内臓を鍛えています。
腹の上にボールを乗せ、腹の力を抜きます。
息を吐きながら、腹にボールをめり込ませるようにしてゆっくりと転がします。
内臓が圧迫されるため、外部からの圧力を受けたときの抵抗力ができ、内側から打たれ強くなることができます。

ロードワークで心肺機能を鍛える

さらに、心肺機能も鍛える必要があります。
ボディブローは、呼吸器系に影響をおよぼします。
そのため、心肺機能が強いボクサーほどボディブローが効きにくくなります。

心肺機能を鍛えるには、やはりランニングがもっとも効果的です。
毎日のロードワーク、地道な走り込みが、打たれても効かないタフネスを培ってくれます。

ボディブローにはデメリットもある

ボディブローには、

・接近しないと打ちにくい
・ガードがさがりやすい
・ローブロー(ベルトラインより下を叩く)の反則になりやすい
・攻撃が地味なので、ポイントを落としやすい

というデメリットがあります。

ですが、クリーンヒットすれば一発で効かせることができ、クリーンヒットしなくてもたくさん打てば相手を消耗させることができるという、大きなメリットがあります。

まとめ:ボディーブローに着目できれば、ボクシング観戦の通になれる?

ボクシングを観るときは、ボディブローにも注目しましょう。
ボクサーが使っている戦術や駆け引きについて、いろいろと気づくことができると思います。

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